【2025.7】クァンタムスケープ上昇の背景を解説

まぬるん

投資歴4年。米国株を中心に株式投資を行う。株や経済関係の本は300冊以上読破。独自の「黒字転換期」を狙った投資法を確立。投資4年で元手を3倍にする。

最近、クァンタムスケープ(QS)の株価が急騰しています。
「なんでこんなに上がったの?」「もう買い遅れ?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、株価上昇の背景にある技術革新「Cobra」や、村田製作所との協業がもたらす影響をわかりやすく整理しました。
一見すると夢のようなニュースですが、収益化前のスタートアップであるQSにはリスクもあります。
短期的な上昇に飛びつく前に、どんな材料があり、どんな注意点があるのかを知っておくことが大切です。

この記事を読めば、今の急騰の本質が見えてきます。ぜひ最後までチェックしてみてください。

※本記事の内容は情報提供を目的としたものであり、投資の勧誘を意図するものではありません。
投資に関する意思決定は、ご自身の判断と責任にてお願いいたします。

なぜ今、クァンタムスケープが急騰しているのか?

※TradingView提供のチャート

2025年7月に入り、クァンタムスケープ(QuantumScape/ティッカー:QS)の株価が急騰しています。1か月ほど前まで5ドル前後だった株価が、わずか数週間で13ドルを超える場面もあり、投資家の注目が一気に集まりました。

では、なぜここまでの急上昇が起きているのでしょうか?その背景を3つの要因から整理してみます。

技術革新「Cobra」が与えたインパクト

最大の要因は、2025年6月末に発表された新技術「Cobra」の存在です。
これは、従来のRaptorプロセスに代わる新たなセパレーター製造技術であり、生産性を従来の10倍に引き上げた
と発表されています。

この「Cobra」の採用によって、同社が長年開発してきたセラミックセパレーターの大量生産が現実的になり、EV(電気自動車)用の固体電池が商用化へ大きく近づいたことになります。

つまり、「夢物語だった固体電池が、量産できるフェーズに入った」という見方が、投資家心理に強く働いたわけです。

空売りの巻き戻しで一気に上昇

もうひとつ見逃せないのが空売り比率の高さです。
2025年7月15日時点でのQS株の空売り比率は17.76%と、非常に高い水準でした。
この状況下で急激なポジティブニュースが出たため、空売りをしていた投資家の買い戻し(ショートカバー)が発生し、株価上昇に拍車をかけたと考えられます。

特に個人投資家にとっては、短期的な急上昇に「乗り遅れたくない」と思う心理も作用し、さらなる買い圧力につながったといえるでしょう。

アナリスト評価と市場の期待感

もともとQSは、アナリストの一部から将来性を評価されていた銘柄です。
2025年初旬の段階でも、アナリストの目標株価中央値は6.33ドル、強気なアナリストは8ドル超えを予想していました。

このような評価が現実味を帯びてきたことで、市場は「本当に動き出したのかもしれない」と感じ、資金が一気に流れ込んだと見られます

村田製作所との提携が持つ意味

2025年4月、クァンタムスケープと村田製作所がセラミックセパレーターの量産に向けた技術協業を開始したという発表がありました。
このニュースは、株価に対するインパクトこそ当初は限定的だったものの、今回の急騰局面で「Cobra技術の量産に向けた布石だった」と再評価されつつあります。

では、具体的にこの提携にはどんな意味があるのでしょうか。

両社の強みがかみ合った協業

クァンタムスケープはセラミックセパレーターの研究・技術開発に特化した企業です。
一方で、村田製作所はセラミック素材や電子部品の高精度な量産加工技術において世界有数の企業です。

両社の協業は、次のような“強みの補完関係”になっています。

クァンタムスケープ村田製作所
セラミック固体電池の技術開発セラミック材料の量産ノウハウ
EV向けに特化した設計力精密加工とスケール生産の実績
技術の先進性商業化に向けた安定供給力

この組み合わせによって、QSの技術が「実験室の技術から商用技術へ」と進化する後押しになると期待されています。

量産化とコスト削減への道筋

固体電池における最大の課題は、性能ではなく「量産の難しさとコスト」でした。

そこに、村田製作所の製造技術が加わることで、Cobra技術を量産レベルに引き上げ、コスト効率を高められる可能性が出てきました。
これは、単なる技術協業にとどまらず、将来的な事業提携や量産供給体制の構築まで見据えた動きといえるでしょう。

なぜ村田がQSと組んだのか?

村田製作所にとっても、この提携は戦略的な意味を持ちます。
現在の主力である電子部品分野だけでなく、EV市場という成長産業への参入機会を得ることができるからです。

つまり、両社にとって“お互いにメリットのある未来投資”となっており、市場がこの動きを評価し始めているということです。

ちなみに、同じ時期の村田製作所の株価は全く上がっていません。

今後の成長シナリオと投資家が見るべき点

クァンタムスケープの株価が急騰したとはいえ、同社はまだ収益化前の企業です。
これからの動き次第で大きく成長する可能性もあれば、逆に期待外れに終わるリスクもあります。

ここでは、今後の展望と、投資判断をする上で注目しておきたいポイントを整理してみましょう。

2028年までの資金繰りは問題なし

まず、同社の財務体質については安心材料があります。
2025年第1四半期時点で、現金などの流動性が8.6億ドルあり、現在のペースで開発・運営を進めても2028年後半まで資金が持つとされています。

これにより、「途中で資金が尽きて計画倒れになる」といった懸念は、今のところ少ないといえるでしょう。

実用化・収益化はこれからが正念場

いくら技術的ブレークスルーがあっても、それが実際の製品・収益に結びつくかどうかは別問題です。

現時点での状況は次の通り:

  • 製造技術(Cobra)の開発は進展したが、まだ商用出荷には至っていない
  • 村田との提携により、量産化の土台は整いつつある
  • しかし製品搭載の実績や受注先の明示はない

つまり、「あとは実用化と受注」という段階に差し掛かっており、今後の発表や業績報告は要注目です。

競合との比較も忘れずに

固体電池は、各国・各社がしのぎを削っている分野です。以下は代表的な競合企業です。

企業名特徴
トヨタ全固体電池のパイロット生産開始、特許数世界最多
パナソニック車載用リチウム電池でテスラと提携中、次世代開発中
ソリッドパワー(Solid Power)BMW・フォードと提携する有力スタートアップ

こうしたライバル企業との技術力・量産スピード・提携先を見比べることで、QSの優位性や課題が見えてくるはずです。

投資判断する上でのリスク要因は?

クァンタムスケープの技術や将来性に期待が集まっているのは事実ですが、楽観視だけでは危険です。
特に急騰した直後のタイミングでは、冷静なリスク分析が欠かせません。

ここでは、投資判断において押さえておきたい主なリスク要因を3つ挙げます。

技術遅延リスクと赤字継続の可能性

同社はこれまでにも「革新的な発表→実用化に時間がかかる」という流れを繰り返してきました。
Cobra技術も量産化に道筋はついたとはいえ、本当に安定して製造できるかどうかは今後の検証次第です。

また、2025年Q1時点の営業損失は1.24億ドルと依然として赤字です。
今後も商用化までに数年を要する可能性がある以上、「技術があっても稼げなければ株価は下がる」という冷静な視点も持っておきたいところです。

EV業界全体の景気・需要変動

QSはEV向けの次世代電池を提供する企業です。つまり、EV市場そのものの伸びに大きく左右されます。

たとえば、以下のような事態が起きれば影響は避けられません。

  • 政府のEV補助金が打ち切られる
  • 中国や欧州でEV需要が一時的に鈍化する
  • バッテリーの価格競争が激化する

特にマクロ経済の動きが不安定な時期には、EV全体のバリュエーションが見直されるリスクがあります。

過熱感と短期的な調整リスク

今回の急騰は、空売りの巻き戻し(ショートカバー)や市場の思惑による面も大きく、「期待先行」で買われた可能性があります。

  • 短期的に4ドル台→13ドル台まで一気に上昇
  • 空売り比率が高く、買い戻しによる急騰の反動も想定される

これにより、短期的には調整局面(値下がり)が訪れる可能性もあり、長期投資を前提としないとリスクが高いといえるでしょう。

まとめ|急騰の背景を知って冷静に判断しよう

クァンタムスケープの株価急騰は、「Cobra技術による生産性10倍」というインパクトのある技術発表と、村田製作所との提携による商用化への道筋が見えたことが主な要因です。
さらに、空売りの巻き戻しや市場の期待感が重なり、短期間で株価は3倍以上に跳ね上がりました。

とはいえ、同社はまだ収益を上げておらず、実用化・量産が今後のカギを握ります。
将来性に魅力がある一方で、技術の遅延やEV市場全体の不確実性といったリスクも抱えています。

今回の急騰をチャンスと見るか、様子を見るかは人それぞれですが、大切なのは「流れに流されず、背景を理解して判断すること」です。
テクノロジー株に興味がある方は、短期の値動きだけでなく、企業の中長期的なビジョンや財務状況にも目を向けていきましょう。

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