財務データで読み解くクァンタムスケープ|いつ黒字転換できるのか?

まぬるん

投資歴4年。米国株を中心に株式投資を行う。株や経済関係の本は300冊以上読破。独自の「黒字転換期」を狙った投資法を確立。投資4年で元手を3倍にする。

革新的な全固体電池で注目されるクァンタムスケープ。
私自身もこの企業に投資しており、将来性には大きな期待を寄せています。

しかし、現時点では売上ゼロ・赤字継続という不安要素も多く、慎重な見極めが必要です。

本記事では、同社の財務データや最新決算をもとに「黒字転換はいつなのか?」という視点で現状を整理。
夢の技術に賭けるべきかどうか、冷静に判断するための材料としてお役立てください。

※本記事の内容は情報提供を目的としたものであり、投資の勧誘を意図するものではありません。
投資に関する意思決定は、ご自身の判断と責任にてお願いいたします。

クァンタムスケープの財務概要

クァンタムスケープ(ティッカーシンボル:QS)は、全固体電池の開発を進めるスタートアップ企業で、2020年に上場を果たしました。

現在、製品の商業販売は行われておらず、売上はゼロの状態が続いています。
主な収益源は政府系補助金や金利収入などで、製造販売による利益は発生していません。

一方で、研究開発費への投資は年々増加しており、2025年第1四半期には前年同期比14%増の9,560万ドルを計上しました。
これは全体の支出の大半を占めており、製品の量産体制を整える前段階としては自然な流れですが、黒字化を目指す上では注視すべき点です。

また、一般管理費は前年比42%減の2,800万ドルに抑えられており、経費削減の努力も見られます。
それでも同四半期の純損失は1億1,440万ドルとなっており、赤字構造は依然続いています。

簡潔に言えば、現在のクァンタムスケープは「将来に向けた研究投資を全力で進める赤字企業」というステージにあります。

2025年第1四半期決算から見えるポイント

2025年第1四半期も、クァンタムスケープの売上はゼロに近い状態が続いています。
製品販売はまだ開始されておらず、開発段階にあることが理由です。

ただし、研究開発の進捗は着実に進んでいます。特に注目すべきは以下の点です:

  • 研究開発費は前年比14%増の9,560万ドル
  • 一般管理費は42%減の2,800万ドルに減少
  • 純損失は1億1,440万ドル(前年同期は1億2,060万ドル)

また、2024年には自動車顧客向けに初のサンプルQSE-5セルの生産と出荷が始まりました。
このセルは以下のような性能を備えています:

  • エネルギー密度800 Wh/L超
  • 15分未満の急速充電能力

これにより、技術的な前進が数値として明確になりつつあり、投資家にとってはポジティブな材料です。

資金繰りと財務健全性の現状

クァンタムスケープにとって重要なのは「資金がいつまで持つか」という点です。
2025年3月31日時点での現金および有価証券の保有額は約8億6,030万ドル
現行の支出ペースを考慮しても、2028年後半までは持ちこたえられると経営陣は見ています。

この見通しは、フォルクスワーゲン傘下のバッテリー子会社PowerCoとの協力契約にも支えられています。
2024年7月に締結されたこの契約により、QSE-5技術の産業化が本格化
将来的にはライセンス契約への移行も視野に入っており、同社のコストと資本要件を大きく下げる可能性があります。

加えて、長期借入金はほぼゼロで、これまで通り株式市場からの資金調達が中心です。
したがって、将来的な増資リスクには引き続き注意が必要です。

※クアンタム・スケープは、Microsoft創業者のビル・ゲイツ氏ら世界の資産家33名による、再生可能エネルギー分野の推進や技術開発に投資するファンド「Breakthrough Energy Ventures (BEV) 」の投資先として公開されています。
このBEVにはAmazon創業者のジェフ・ベゾス氏ら、孫正義氏らも賛同しています。

黒字転換はいつ?予測に必要な視点

クァンタムスケープが黒字化を達成するタイミングは、依然として明確ではありませんが、以下のようなポイントから推測することが可能です。

黒字化を左右する3つのポイント

  • 商業化スケジュール
     → QSE-5セルのBサンプル出荷が始まり、パイロットラインも稼働中。今後の量産体制がカギ。
  • 提携先との契約進展
     → PowerCoとの協業により、産業化が加速中。ライセンス契約への移行で収益構造にも変化が見込まれます。
  • 製造コストの削減
     → 技術的には目処が立ちつつあり、大量生産によるコスト圧縮が実現できれば黒字化が近づきます。

市場の見方は分かれる

一部では2027〜2028年頃の初期売上計上を見込む声もありますが、実際の黒字転換にはさらなる開発進捗と生産効率の向上が必要です。
とはいえ、PowerCoとの提携によるライセンス収入が早期に得られるようになれば、損益構造は好転する可能性があります。

まとめ|クァンタムスケープは「夢を追う赤字企業」なのか?

クァンタムスケープは、依然として赤字状態にありますが、その一方で明確な技術的進展と戦略的提携が進行しています。

  • サンプルセルの出荷と性能面の成果
  • PowerCoとの協業による産業化の加速
  • 現金資産の豊富さと資金持続見通し(2028年後半まで)

黒字化にはまだ時間がかかるものの、「夢を追うだけの赤字企業」から「商業化が見えてきた現実路線の開発企業」へと、ステージが一歩進んだ印象です。

投資家としては、増資リスクや実用化の遅延リスクには引き続き警戒しつつも、財務的な土台と技術の進展に注目する価値は十分にあるといえるでしょう。

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